2020年施行の建設業法改正のポイントまとめ

建設業許可

知っておくべきなのは誰?

建設業法を理解される方がいい人

現場代理人、工事主任、 現場担当者、 社長、工事部長・課長、総務担当者

もし、現場担当者が建設業法をちゃんと知らなかったとしたら…

  • ■ 配置するべき技術者を配置できない
  • ■ 残すべき記録を正しく残せない
  • ■ 協力会社との契約などがうまくいかない

これらができていないと…

  • ■ 国土交通省や都道府県知事による勧告や、業務停止、建設業許可の取り消しなどの行政処分を受ける恐れ
  • ■ 違反の内容によっては3年以下の懲役、または300万円以下の罰金を科せられる場合も

建設に関する許認可や、現場管理のルール、書類等に関するルール、下請け等の契約のルールなど、建設における業務を円滑にし、かかわりのある人すべてを公平に守るための法律です。

建設業法の基本その1 「現場には技術者を配置すること」

「工事現場には一定の能力を持った技術者を必ず配置しなさい」という意味です。

仮に、ビルがきちんとまっすぐに建っていたとしても、
現場に技術者が配置されていないと法律違反です。

万が一ビルに問題があったときに、きちんとした技術者が管理責任者として配置されていないとしたら、これは大問題となり、知らなかったでは通りません。

建設業法の基本その2 「契約書をきちんと結ぶこと」

建設業というのは複数の会社が一緒になって仕事をする業界です。

塗装は塗装屋さん、大工工事は大工さん、左官工事は左官屋さん…、
工事の内容によっていろいろな業種の会社が関わります。

しかも、元請、下請、孫請け、ひ孫請け、4次請け、5次請けなどに分かれていることが多く、大きな会社が仕事を受注し、その仕事を細かく分けて下請け業者に発注するという構造になっています。

この場合、どうしても発注する側の会社と請負う側の会社には主従のような関係が成立します。昔ながらのやり方である簡単な契約や口約束での契約は、このような関係の中での下請けいじめが発生しやすい状態を作っていました。

そこで、建設業法では、
「対等な立場で合意し、契約内容は公正でなければならない」とされ、キッチリした契約書を残すように定められています。

建設業法の基本その3 「記録をきちんと残すこと」

実際の現場では用意された書式などがあり、それに書き込めば良いようになっていることが多く、法律知識がなくても大丈夫なのでは?と思う方もいるでしょう。

しかし、この書類は何のための書類か、本当につくらなければいけない書類は何か

というのを知らないばかりに、絶対に必要な書類を作り忘れていたり、絶対に記入しなければいけない項目が抜けてしまっているなどのミスが起こる可能性があります。最低限、現場の管理をする人は知識を身につけておくことが大切です。

何かトラブルが起きたときに、例えば資格を持っていない人が仕事をしていたとか、下請けとの契約が不十分だったということが問題になります。

そのとき、それらが分かる書類が残っていない、正しく記載されていないということが処罰の対象になる可能性があります。

例えば現場担当者が、建設業法をきちんと知らずに法律に違反してしまった場合、悪意がなかったとしても国土交通省に目を付けられたり、処罰の対象になってしまったりすることがあります。

うっかりのミスで懲役になるようなことがあるとは思えませんが、営業停止などが言い渡されるケースは決して少なくありません。

もし営業停止を言い渡されてしまったら、その間は一切の営業が完全にできなくなります。
つまり、営業停止期間が3か月なら3か月間の受注が、ゼロになってしまうということです。

2020年の建設業法改正の3つのポイント

今回の改正は規制がゆるく、やさしくなっているものが多いです。

今までの基準で考えていると、本当は請けられる工事なのにあきらめてしまったり、使う必要のない人材を使ったりするという、無駄や機会損失が考えられます。

今回の改正で、特に注目するべきポイントは次の3つです。

POINT1 建設業の働き方改革の促進のための改正
POINT2 管理するための技術者要件が緩和される
POINT3 建設業を営む企業の継続のための緩和

POINT1  建設業の「働き方改革」の促進のための改正

全体的にゆるくなっている今回の法改正ですが、この項目は企業にとっては厳しくなっている部分であり、建設業の許可にも関わることがあるので注意が必要です。

著しく短い工期の禁止

今回の改正では、工期に関する基準が作成され、あまりにも短い工期による契約に対しては、
国土交通大臣からの勧告が行われることになりました。

建設業界には「言われたらやる」というような風潮が少なからずあり、現場に関わる下請け業者が土曜も日曜もなく仕事をしないと間に合わないというような工事も発生しています。

無理な工期を押し付けるような請負契約に対してメスが入りました。著しく短い工期による請負契約が禁止されました。

社会保険加入の義務化

また、労働者を守るための制度のひとつとして、建設業の許可を受けるための要件に「社会保険加入」が追加されることになりました。

これによって社会保険未加入の業者は建設業の許可や更新を認められないこととなりますので、こちらも注意が必要です。

まとめ

■短すぎる工期の契約に対して、国交省が勧告できるようになる
■建設業許可の要件として社会保険の加入が義務付けられた

もし、この改正をちゃんと知らなければ

■無理な工期の工事を断り切れず、残業や休日出勤がなくならない
■ブラックな仕事環境に耐えられず、従業員がやめてしまう
■ 国土交通省に目を付けられ、勧告が行われることもある
■ 社会保険未加入だと、建設業の許可や更新を認められなくなってしまう

POINT2 管理するための技術者要件が緩和される

管理するための技術者要件が緩和される、という改正です。

監理技術者・主任技術者の配置要件の緩和

今まで禁止されていた「元請の監理技術者の兼任」が可能になり、「下請の主任技術者」が不要になります

人手不足が簡単に解消する見通しはなく、実際の工事に支障が出ている状況ですので、技術者要件が少し緩和されたのです。

またこの改正によって、経営層の高齢化による中小企業の廃業を防ぎ、地域の建設業が維持できることも期待されています。

この改正が施行されると、改正前には必ず配置しなくてはならなかった技術者がいなくても行える工事が増えます。

それに伴って、今まで「人がいないからやめておこうか」とあきらめていた案件が受注の対象になるケースも増えるでしょう。

反対に知らなければ、法律上は必須ではなくなっている技術者を配置して人件費を無駄に使ってしまうケースも発生すると考えられます。

まとめ
監理技術者要件の改正は…

元請けの監理技術者が兼任できる
下請けの主任技術者が不要になる

もし、この改正をきちんと知らなければ

■「人がいないから受注できない」と請けられる可能性がある工事案件をあきらめてしまう!
■不要な技術者を配置して、無駄な人件費を使ってしまう!

POINT3 建設業を営む企業の継続のための緩和

建設許可の取得や更新、事業承継ををあきらめていた企業にとって大きな影響がある改正です。

経営業務管理責任者の規制の合理化

これまでは、建設業許可を取るためには建設業の経営経験が5年以上必要でしたが、今回の改正でこの要件そのものが廃止されることになりました。

今後は、組織全体が建設業としての経営業務の管理を適正に行える体制があれば、その要件を満たせることになります。

この改正によって、
建設業の許可がかなり取りやすくなることが予想され、要件が厳しいことで廃業をやむなくされる企業の継続が可能になります。

円滑な事業承継制度の創設

現行の建設業許可制度では、事業譲渡や合併、分割、相続などにより、次の世代へ事業承継を行ったとしても『建設業許可』は承継できません。

事業を譲った側は「建設業を廃業」し、譲られた側は「新規で建設業を申請する」ことが必要なのです。

今回の改正によって、事前の届け出による認可があれば建設業許可が承継されることになり、空白期間がないスムーズな事業承継が可能になります。

まとめ
建設業を営む企業の継続のための緩和 とは…

■建設業許可の経営経験5年以上の要件が撤廃される
■事前の届け出で建設業許可が承継できる

もし、この改正をきちんと知らなければ

■廃業しなくてもいい企業が(望まない)廃業をしてしまう
■建設業許可が厳しいからと事業承継をあきらめてしまう

総まとめ

POINT1・建設業の働き方改革の促進のための改正

→著しく短い工期が禁止され、違反者には国交省が勧告できるようになる
→建設業許可要件に社会保険加入の義務が追加される

POINT2・管理するための技術者要件が緩和される

→元請けの監理技術者が兼任できる
→下請けの主任技術者が不要になる

POINT3・建設業を営む企業の継続のための緩和

→ 建設業許可の経営経験5年以上の要件が撤廃される
→ 事前の届け出で建設業許可が承継できる

愛知県西三河建設事務所の向かいの桜 2020.3

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