建設経済研究所がレポート
建設経済研究所は、建設企業における就業環境の改善や多様な担い手を育成する取り組みに関する調査結果を『建設経済レポートNo.72』でまとめた。他産業と比べても非常に進んだ取り組み事例が確認できた一方で、「建設業では他産業よりも高齢化が進んでいるにもかかわらず、いまだ取り組みは不十分である」と指摘。
レポートでまとめた事例などを基にして、働きやすく多様な担い手が活躍でき、選ばれる産業へ転換するため、「具体的な取り組みを起こす時である」と結論付けた。
レポートでは魅力的な産業への転換に向け、「働く場」としての建設業の現状を分析した。他産業と比較した就労条件をみると、1日や週の所定労働時間は変わらないものの、年間休日総数や年次有給休暇の取得日数は平均を下回っている。結果として、年間の総実労働時間は全産業平均を335時間(2018年)上回り、主要産業の中で最も多い状況にある。
時間効率の意識付け
建設業が働きやすい業界に変わるための方向性として、ワーク・ライフ・バランス(WLB)の実現に向けた企業による支援が重要だとし、3段階に分けた取り組みを解説した。まず、土台部分に多様な価値観やライフスタイルを受容できる職場風土への改革を位置付け、建設業では女性や外国人の現場就労、男性の家庭参加への理解醸成に取り組むべきだとした。
核となる1階部分には、時間意識を高めた仕事管理・働き方の実現や人材育成が必要とし、建設業においては残業削減、週休2日制、職人育成手法の変革、女性の能力開発の取り組みを挙げた。「時間をかける働き方」から「時間効率の高い働き方」への転換を進める働き方改革が肝要としている。
その上の2階部分には、育児・介護などの両立支援のための制度導入を置く。2階部分に法定水準を満たすような制度を整備しても、土台部分にある職場の理解や1階部分の活用できる環境がなければ、WLBの実現は難しい。制度だけが先行してしまうと、社員間の労働時間の不平等も引き起こしかねない。